6歳児と歌舞伎を観に行ってみた

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ひょんなことから息子がカブキの優待券をもらってきて、カブキをみにいきたい!と、言い出した。

「解説講座つきプラン」がとてもいい。

息子は映画ですら怖くて見られなくて、トイストーリーですら「もう観ない・・・」と言い出すというのに。絶対カブキがなんぞやなどわかっていない。けれども、せっかく「いきたい!」と言い出したのだから、ここは折角だからちょっと観に行ってみよう。と、いうことになった。

とはいえ、私が歌舞伎を観たのは、女子高生時代に学校行事で1回と(と、思い出しながら思ったのだけれど、あれは歌舞伎じゃなくて能と狂言だった気がするし少なくともその区別がつかないくらいには全く興味がなかった。)、新入社員の頃ものすごく歌舞伎好きの上司に連れられて行ったのが1回。それ以来もう、10年以上観ていない。もちろん知識も何も皆無。古典芸能とかもう、遠い世界すぎる。

いろいろ調べてみると、明治座の花形歌舞伎は6歳から有料で、5歳以下は入場できないとのこと。息子はギリギリ行けるというわけですね。(だから優待券もらってきたのだと思うけれど。)

でもなあ6歳児が急に行って楽しめるもんでも正直ないよなあ、絶対怖がるし。。。どうしたもんかなー、と、思っていたら見つけたのが、明治座の「歌舞伎解説講座つきプラン」というもの。通常大人向けのプランなのですが、1日だけ、対象を小学生とその保護者にしている日があったのです。しかもそのプランなら、小学生は1等席が解説もついて5000円!(通常1等席は13000円)もうこれしかないということで速攻で明治座に電話して予約をしました。(もはや講座つき云々より5000円に惹かれて。)

講座を聞いてすっかり八犬士にはまった息子が、八犬士の漢字練習に励んでいた。

この小学生向けの歌舞伎解説講座が、ものすごーーーーーくわかりやすくてよかった。イヤホンガイドの声を担当しているお姉さんが、その日の演目である「里見八犬伝」について、作者の人となりから始まり(里見八犬伝の作者は「滝沢馬琴」って習った記憶があるのに今は「曲亭馬琴」って教えているそーです。誰かと思った。)大まかなあらすじや、見どころ、そしてなぜそれが見どころなのか、「だんまり」とか「立廻り」とか、歌舞伎ならではの面白さや奥深さも交えながらすごくわかりやすく教えてくれた。小学生でもわかるように説明してくれたので、もちろん10年ぶりに歌舞伎を観る母さんにとってもありがたかった。

1時間弱ほど、講義を聞いて、いざ会場へ。1等席というのがこれまた素晴らしくて、舞台目の前の席、どまんなかで贅沢に観ることができました。やっぱりこういうものは、高いことには意味があるものですね。3000円の三等席でいいよ。。と、思っていたけれど、一等席の価値はものすごくよくわかった。

イヤホンガイドもすごくいい。

そして、なんせイヤホンガイドの声のお姉さんの講座だったのでイヤホンガイドを勧められたわけですが(700円)、これもまた本当によくできていた。決して邪魔にならないタイミングと声で、すごくわかりやすくその場面を説明してくれる。解説講座とイヤホンガイドのおかげで、歌舞伎をきちんとストーリーとして楽しむことができた。あれがなければ「お話」自体を理解することはなかなか難しかったと思う。私も息子も。

そして歌舞伎というのはほんとに見どころというか見せ場に溢れるもので、というか見せ場がすごくわかりやすくて、役者さんたちがビシ!っと決める時に、ほんとに自然に拍手してしまう。変な話だけれど、もしスマホで撮影可とかなら、このご時世みんなバシバシ撮ってしまうと思う。いやありえないけれども例えとして。そういう、誰にでもわかりやすい「見せ場」が、たくさんあって見ごたえがある。そしてやっぱり、所作に無駄がなくて美しい。独特な世界だと思うけれども、やっぱりそういうところで鍛えている人たちの動きというのものすごく洗練されていてすっかり魅了されてしまった。

今回の舞台は、化け猫が出てきたり幽霊が出てきたり生首が飛んだり(!)、結構怖い場面もたくさんあって、何と言ってもトイストーリーですら怖い、なんならアンパンマンの映画すら怖いという息子は途中心が折れ、「これいつ終わるの・・・もう帰ろう・・・」と、言い出しました。せっかくだから最後まで観たいけれど、無理に見せるのもなあ、しかし私は最後まで観たい・・・パパに迎えに来てもらおうか・・・とか色々考えていたのだけれど、1回目の休憩時間に、売店でいっぱい試食して美味しいカレー豆を買って、アイスも買って食べたところ、すっかりご機嫌になり、「これからチューバンで、またきゅうけいして、その後後半でしょ?それなら観れる!」と言い出したので、しめしめと結局最後まで二人で観ました。

そして休憩時間までもいい。

この休憩(30分)がまた楽しくて、母さんはビールを頼んで(なんかグラスの下からビールが出てくる不思議な仕組みであった。すごかった。)息子はアイスを食べて、あそこ面白かったねとか、イヤホンガイドのおねーさんが教えてくれた「だんまり」はあの場面だったね、とか、ところで中村隼人はかっこ良すぎないかとか、そういう話をしながらビールを飲んでいると、なんだこれはデートですか、みたいな感じで大変にわくわくしました。今観たものを、二人でじっくり共有できるっていうのは、これは成長したからこそで、うれしいなあ、こういう時間も持てるようになったのだなあと、しみじみ思った。

2回目の休憩では、劇場内の喫茶店で明治座特性という和風サンドイッチなるものを食べました。キュウリ、かまぼこ、海苔、チーズの挟まったサンドイッチで、これがなかなかおいしかった。薄く切ったかまぼこと海苔の組み合わせ、キュウリの歯ごたえ、そこにいい味を出してくるチーズ。家でも作ろう、これ。

第3幕はさすがの見せ場だらけで、愛之助さんもすっかり私が魅了された中村隼人もとにかくかっこよかった。歌舞伎がこんなにかっこいいとは思わなんだ。訓練され、洗練された美というのはすごいですね。胸を打つ。

そんなこんなであっという間の四時間。今回二人で楽しめたのは、詳しい人の講座を聞いて、イヤホンガイドをつけて、観劇したというところがやっぱり大きいと思う。この歳になって、そして母になって改めて、わからないものはわからないと言うとか、詳しい人に教えてもらうとか、当たり前だけどその大切さを改めて知ったような気がする。歌舞伎も里見八犬伝も全然知らないけど、ということを自分でちゃんとわかった上で行ったからこそ楽しめたのかもなあと思う。いや本当に当たり前なのだけれど、「わからない」「知らない」ということを知る、というのは、実は少しの抵抗があるものかもしれないから。

だから全然わからない人向けに、イヤホンガイドなるものを準備してくれたことも、小学生にも観てもらおう、と工夫をしてくれたことも、なんか歌舞伎界ありがとう、と、思った。イヤホンガイドなんて、小学生なんて、邪道だ。と、切り捨てるのではなく、古典芸能の間口を広げようとするのはやっぱり素晴らしいことだと思います。ありがとう歌舞伎界。

というわけで本当にすっかり歌舞伎の魅力にはまって帰ってきました。息子と二人で観られた、というのが本当によかった。かなりオススメです、子供と歌舞伎。そして息子にまた今度一緒にいこーね♡と、言ったところ、「えー、来年くらいね。」と、クールに返されました。来年か・・・

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